サロン ド 冨山房 - Folio

08年6月20日(金)第21回サイエンスカフェを開催いたしました。

第21回 6月20日(金) 18:30〜20:30
「空間はスープのごとし」
岩城和哉氏(建築家・東京電機大学准教授)

「空間はスープのごとし」とは、一体?と、タイトルをごらんになった方の多くは首をひねったことだろう。私もその1人だ。タイトルだけで惹きつける岩城和哉氏とはどんな方なのだろうか。
まず「建築」とは何かということから、岩城氏は始めた。建築はドイツ語で「baukunst」といい、「bau」=「建物」、「kunst」=「芸術」をそれぞれ意味する。昔の人たちは建物と芸術を組み合わせて、「建築」という言葉を作った。ウィトルウィルスは「建築は強・用・美の理が保たれたものである」と説いた。「強」は構造、「用」は機能、「美」は意匠とすると、建築は工学なのか、それとも芸術なのだろうか。作っている過程は工学だが、できあがったものは芸術と呼ぶにふさわしい。建築は工学であり、芸術であるのだ。
では、どのような工学で芸術なのか。疑問は膨らむ。岩城氏が出した答えは「空間をつくる工学であり、芸術である」。絵画は二次元であるが、彫刻や建築は三次元である。彫刻は外から鑑賞するが、建築は中から鑑賞するものだ。中の「空間」がすばらしくなければならない。「空間が建築の本質だ。」
「空間」とは何者か。言葉から見てみると、ドイツ語で「raum」、英語で「space」、「宇宙のように無限に広がる」という意味もある。しかしピンとこない。ふと「raum」は「room」とも響きが似ていると思った。そこから見えてきたのは「建物において空間は無限に広がる宇宙のようなものではなく、物体に囲まれた部屋のようなもの」ということだった。実際に「空間」を作るとき扱うのは「物体」。何か物を置いたり、取り去ったりして、間接的に「空間」を作り出す。「空間」を作るために、様々な「物体」が加えられ、渾然一体となり、そして「物体」のみだけでは予測のつかない「空間」を作り上げ、芸術となる。という点まで到達したとき、ふと頭にひらめいた。「空間はスープのごとし」。
壁や床の材料が何であろうが、入ったときの印象が「すばらしい」と思えるものであればいいのだ。空間は決して空虚ではない。いろんなものが合わさって、空間ができるのだ。そこが岩城氏の到達点だった。そう理解できれば、いろんなものから空間がデザインできるはずだ。岩城氏は学生たちに課題を出し、いろいろなもので空間を作ってみた。1枚の紙、梱包材も材料になった。あるとき、大学付近の竹林から大量の竹を譲り受け、これを材料にして空間が作れないか考えた。ストローで模型を作るところから始めた。これはいける。学生をつかまえては作業を手伝ってもらい、今までに見たことのない不思議な空間ができあがった。断熱効果があって、中は想像したよりも涼しかった。思わぬスープができあがった。
ゲストの話を聞いて、フロアから「空間と時間は対立するものではない。空間は時間的な意識の流れを含んでいる!」という鋭い考察も飛び出した。またスタイリッシュな岩城氏に誘われて、「今日のパワーポイントは出色にきれい。フォントは?背景は?」という「通」の質問もあった。フロアが一体となってゲストと楽しんでいた。
岩城氏は規模の大きな建築デザインから家のリフォーム設計までこなす。歯科医院の設計では、治療の椅子にのる人間が上を向くので空を見せたり、緑が見える家なら壁に角度をつけて景色を見せる。通常なら隠してしまう大きな梁を逆に利用するなど、その場にあるものを最大限に活かして、中にいる人間が心地よく、楽しめるようなそんな空間を作り出す。岩城氏が作るスープは遊び心が詰まっていた。なぜなら彼自身が、スープ作りをまるで子供のように楽しんでいるからだ。さて、彼の次のスープはどんな味がするのだろう。

岩城氏の作品はこちらのホームページへ
http://iwk.asablo.jp/blog/















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