サロン ド 冨山房 - Folio

08年2月15日(金)第17回サイエンスカフェを開催いたしました。

第17回 2008年2月15日(金)18:30〜20:30
手足のように働く手足のない連中〜体の中の「アメーバ」たち

垣内康孝氏 お茶の水女子大学特任講師

人体は数百種類からなる数兆個の細胞から成り立っている。その中に動き回る細胞がいるという。今回その細胞についてお話ししてくれたのは、お茶の水女子大学特任講師の垣内康孝さんだ。
アメーバとは何か。土の中を覗いてみる。形が一定に留まらず、いろいろな形に変化し動き回る生き物がいる。これがアメーバらしい。動き回るというより、這いずり回るイメージだ。
ヒトではどうか。動く細胞の例として、心筋細胞が挙げられた。この細胞は「動く」が「動き回る」ことはない。だが、ヒトにも動き回る細胞がある。そして、細胞の移動は実はとても重要な性質であることがわかっている。
例えば、「発生」。受精した卵はまず2つに分かれ、4つに分かれ、8つに分かれ…とどんどん分かれ、やがて胞胚と呼ばれる中空の細胞のかたまりになる。そしてここからが重要。原腸陥入という、胞胚の中に外壁が陥没していく現象が起こる。これによって消化管や口、肛門などができるのだが、このとき細胞の移動が起こるのだ。ある研究者はこれを人生最大のイベントだと言っているらしい。
細胞の移動が重要になるのは、傷の修復時もそうだ。傷がつくと、それが信号となって細胞が活発になり、傷口を修復するために移動していく。つまりヒトが生きるためには、細胞の移動は欠かせない現象なのである。
では、その移動はどのような仕組みになっているのだろうか。ヒトの場合は足があり、足を動かす筋肉があり、それらが連動し、地面を踏みしめることで移動していく。細胞の場合も、細胞骨格と呼ばれる「アクチン」が足、筋肉の働きをする。地面(接着面)とくっついているのは接着分子、例えばインテグリン。インテグリンで張りつき、アクチンが伸び、形を変えながら移動する。このサイクルの繰り返しだ。動き方はこれだけではないというのが興味深く、奥深いところだ。
さてここまで説明したところで、テーマにある「好き嫌い」とは何か。白血球を例に取って話をしてくれた。
まず体内にバクテリアが侵入したとする。すると白血球(より詳しく言うと好中球)がそのバクテリアにまっすぐに向かっていく。1つ2つと集まり、最後には捕獲してやっつけてしまうのだ。ここで疑問が浮かぶ。白血球は何を指標にしてバクテリアを見つけるのか、ということだ。研究者は、白血球が「好きな」物質をバクテリアが分泌しているのでは、と考えた。それは見事に正解だった。バクテリアはある誘引物質を分泌しており、それを感じた白血球がバクテリアに向かっていくのだ。それは体を守るためにヒト白血球が進化したのか、あるいは元来バクテリアが備えていた物質が、たまたま誘引物質となったのか。無駄な動きひとつなく、目標に向かう白血球の移動。その全容は、いまだ明らかにはされていない。
目では見えない小さな細胞の小さな動きひとつひとつが、ヒトの命を作っている。その仕組みについて、興味を持ち、注目している垣内さんは、参加者ひとりひとりと時間の最後まで話を弾ませていた。その姿は、人とのコミュニケーションのひとつひとつも大切にしているように見えた。








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