サロン ド 冨山房 - Folio

08年1月18日(金)第16回サイエンスカフェを開催いたしました。

第16回 2008年1月18日(金)18:30〜20:30
「哺乳動物リボソームRNA遺伝子は染色体の上をどのように動いているか」 神田 尚俊氏(東京農工大学)


今回は東京農工大学・神田尚俊氏が、最近のご研究についてお話しくださった。
リボソームRNA遺伝子とは、タンパク質合成の過程で必要なリボソームRNAを作る遺伝子のこと。ヒトでは、リボソームRNA遺伝子は、通常の遺伝子と異なり、13、14、15、21、22番染色体の短腕端にそれぞれ多数のコピーが存在する多重遺伝子である。リボソーム遺伝子の数は、動物種によってまちまちで、サルには1箇所にしか存在せず、逆にマウスは400個も持っている。またそれぞれの塩基配列は進化の過程でも割合よく保存されている。 
神田氏は、進化の系統を手がかりにすれば、ヒトの多数のリボソーム遺伝子のうち、どれが元の遺伝子であるのかを調べることができないかと考えた。そして染色体上で遺伝子の存在を検出するFISH法*を用いて実験し、ヒトの22番染色体のリボソーム遺伝子が、旧世界ザル(狭鼻科目:フクロテナガザル、チンパンジーなど)のリボソーム遺伝子と、2本鎖を形成することを明らかにした。ヒトのリボソーム遺伝子は、22番が元々の所在で、そこから他の染色体へ飛び火していったのだ。また、7種調べた旧世界ザルでのリボソーム遺伝子は、どれも染色体の半ばにあり、ヒトのように端部にあってほかの場所へ移動して増えていける状況ではないこともわかった。
*FISH法:蛍光in situ ハイブリダイゼーション。検出したい遺伝子と二本鎖を形成(ハイブリダイズ)するように設計された短いDNA配列を用い、これを蛍光物質などで標識して、検体における目的遺伝子の所在を蛍光顕微鏡で検出する方法。
最近、遺伝子情報を持たないDNA配列の多くがRNAに転写されていることが知られるようになった。これまで知られていたrRNA、tRNAやmRNA以外に、それ自身はタンパク質合成の鋳型とならないが、他の遺伝子の転写や発現に影響するRNAについて報告がされている。「機能がない」とされて、ジャンクと呼ばれていたDNA配列も、さまざまな「機能を持つ」ことがわかってきているのだ。神田氏は、不活性化されたX染色体を検出するKanda methodを世界に先駆けて報告した研究者だが、このX染色体の不活性化にもRNAが関わることが示されている。
ヒトになぜ非常に多くのリボソーム遺伝子があるのか、働く遺伝子と働かない遺伝子があるのではないか。その違いはどうして起こるのか。研究者たちに、重要な問題は解決済みと思われていたリボソーム遺伝子は、調べてみるとわからないことだらけだった。「自分が興味を持って楽しめる研究でなければ、ここまで続けられませんでした。ヒトには計り知れない奥深いことがまだまだあるのです。」そう語る神田氏の、好奇心あふれる子どものような笑顔に、参加者たちも惹きこまれて、たくさんの質問とやり取りが続いた。











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