サロン ド 冨山房 - Folio

07年7月20日(金)第11回サイエンス・カフェを開催いたしました。

「新しいがん治療法の開発−中性子捕捉療法の進展−」

今回のテーマは「新しいがん治療法の開発−中性子捕捉療法の進展−」、日本原子力研究開発機構の柴田徳思氏がお話してくださった。
放射線治療は、腫瘍に対する優れた効果を発揮する治療法であり、種々のがん治療に適応されている。放射線治療には2つの目的がある。1つは根治照射といって、完全な治癒を目指すもので、その際には、免疫力を上げることが重要である。もう1つは姑息治療といって、完全に治癒することは期待できないが、症状の緩和を目的とする。これらの放射線治療と手術または化学療法を組み合わせることによって、治療の効果が上がることがわかってきた。
放射線には様々な種類がある。光子線に分類されるX線とγ線は、体表面で効果が大きく、内部では小さくなる。さらに途中で止まることがないため、がん組織の陰にある重要な臓器を避けることができない。そのため根治照射が難しく、姑息治療をせざるを得なかった。しかし重粒子線に分類される中性子線は患部にのみ照射できる。ポーラスと呼ばれる器具を使って放射線量を調節し、照射することによって、患部にのみ中性子線を当てることが可能であるため、根治治療が望めるようになり、これにより、手術と同等の結果が得られるようになった。
最近、中性子捕捉療法と呼ばれるものに関する研究が進んでいる(柴田さんはこの研究の取りまとめ役)。ホウ素が中性子を捕捉すると、リチウムとアルファ粒子に分裂し、細胞にエネルギーを与えて止まる。このようにして与えられるエネルギーは、中性子のものよりずっと大きい。そして、中性子線のエネルギーが他のものと比べてずっと小さく、ホウ素に捕捉されてはじめて大きなエネルギーを生じるため、正常細胞への中性子の影響は小さいということがわかる。よって、がん細胞だけにホウ素が入っていれば、がん細胞のみを殺すことが可能になる。また、がん細胞は活発に分裂しているので、アミノ酸を多く取り込む。そのため、アミノ酸にホウ素を結合させたものを用いて、それをがん細胞に取り込ませる方法も開発されている。
効果的な方法が見出されてきているにも関わらず、現在の日本では新薬の認可が難しい。治験に対しての偏見も強く、放射線に対する正しい知識が得られにくい。研究が進んでも、認められない現実がそこにはあるのだ。人材不足も現実問題となってきている。いずれ許可が下りたときのために、人材育成が急がれるという。柴田さんはずっと先の未来までを見ているのだろう。





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