東日本大震災・福島原発事故から10年、福島の漁業は……震災の津波で流されて跡形もなくなり、さらに原発事故で漁業が制限された福島県新地町の漁師の以前の生活と、震災後の動向を描いています。 日本の文化と伝統を調査してきた民俗学者が、漁師と共に暮らして実際に漁業に携わりながら、海と人間の生活、自然のなかの生命を考えます。

「私は震災の大津波から被災された後も、それでも海と人間の生活のことを深く知りたいと思い、オカ者が想定するような「里海」などの観念的な海ではなく、実際に漁業に携わりながら海を理解することになった。私は網から魚やシタモノをはずす作業を続けているうちに、自然のなかの生命について想いめぐらすことが多くなった。そして、長いあいだ伝えられてきた漁師たちの文化、地域で培われてきたユイコなどの社会慣行などを体験しながら、目の前の海で生活できる漁業の幸せこそ守るべきものと強く思った……。(本文より)」

<川島先生の著書>
『津波のまちに生きて』はこちらから
『安さんのカツオ漁』はこちらから

<著者紹介>
川島 秀一(かわしま しゅういち)
1952年生まれ。宮城県気仙沼市出身。法政大学社会学部卒業。博士(文学)。東北大学附属図書館、気仙沼市史編纂室、リアス・アーク美術館、神奈川大学特任教授などを経て、現在、東北大学災害科学国際研究所教授。 著書に、『ザシキワラシの見えるとき』『憑霊の民俗』(以上三弥井書店)、『漁撈伝承』『カツオ漁』『追込漁』(以上法政大学出版局)、『津波のまちに生きて』『安さんのカツオ漁』『海と生きる作法』(以上冨山房インターナショナル)、編著に山口弥一郎『津波と村』(三弥井書店)などがある。

 


2021年3月7日 読売新聞「本よみうり堂」
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