作・絵 フン・グエン・クアン/フイン・キム・リエン  訳者 はっとり こまこ
世界のいろいろな国の子どもたちの暮らしを知りましょう

ベトナムの南にあるメコンデルタという地方では、雨のきせつになるとメコン川の水があふれてしまいます。少年アンやその友だちは、ボートをこいで学校に行かなければなりません。アンは今日、はじめてひとりで出発します。雨がざあざあふりだし、メラレウカの森には、えたいのしれないものが、ひそんでいそうです。くらい水の中にかくれているものはなに…?でも、きっとだいじょうぶ。ひとりたびのおしまいには、友だちがまっていてくれるから。

2015年、シンガポールの出版社Scholastic Asia主催の絵本コンテストで大賞を受賞、アジア諸国の小学校で推薦図書に選出。2018年、Singapore Book Awardで最優秀絵本賞を受賞。

<著者・挿画/訳者紹介>

作・絵 フン・グエン・クアン/フイン・キム・リエン
ベトナムのホーチミン在住。共同作業で子ども向けの物語を書き、挿絵を描く。

訳者 はっとり こまこ
早稲田大学第一文学部卒。翻訳者・イラストレーター。2011~2019年の間、シンガポールとマレーシアに居住。現地の日本語媒体向けに広告やニュースの翻訳、イラスト付き記事などを執筆。出版翻訳に『アンコールの神々 BAYON』(英訳/小学館1997年)、『メディカルヨガ ヨガの処方箋』(共訳/バベルプレス2011年)。NPO法人アジア教育友好協会の正会員兼スタッフとしてアジア地域の学校建設事業・交流事業にも携わる。


ベトナム絵本『ぼくは ひとりで』  おすすめの対象年齢 小学校入学前〜大人

この絵本の原書は、シンガポールで児童書や学習図書を専門に扱う出版社から発行されました。原書の出版社は、対象読者層を「4歳〜8歳」としています。
東南アジアでは5歳で小学1年生になる地域が多く、日本に置きかえると「幼稚園・保育園の年長から小学4年生くらい」と考えられます。
文章の量は少なく、日本語はすべてひらがなで書かれているため、ひらがなが読めるお子様でしたら一人で読むことができます。
絵本の物語やイラストレーションの美しさは、あらゆる世代の方に共感していただけるものです。小学校低学年からシニア世代まで、幅広い年齢層の読者から感想が寄せられていますので、一部をご紹介いたします。

ワクワクした!ドキドキした!最後はホッとした!

娘と一緒に読みました。壮大な絵と、めくるめく展開に親子でじーんときました。

このコロナの時期と、暗闇でぐんぐん進む少年の状況が重なり、胸をうたれました。
大きな川に出れば、川が導いてくれる。この言葉も胸に響きました。この本に出会えてよかったです。

『はじめてのおつかい』みたいな冒険が、ベトナムだと川が道なんですね。
川の色の多彩さが、日本だと山の緑の変化に感じるのと似ていますね。風土の違いにビックリです。

暗闇の森の中で聴こえる虫の声、鳥の声、葉のそよぐ音は、アンにはどんなふうに聴こえていたのか、想像しながらページをめくりました。
ページを追うごとに、川の流れのように、光が射していく描写がとても綺麗で、水牛の群れにたどり着いたところで、ほっとした気持ちになりました。
勇敢なアンの姿に勇気づけられる、素敵な絵本。ふとした出会いの中で、伝え、届けていきたいです。

静かなのにあふれる躍動感が、絵だけでなく翻訳されたことばからも伝わってきました。いろんな環境の子どもたち、それぞれの生活のなかで成長していくことを、思い出させてくれました。

私も退職前は教員でしたので、学校へ行くこと、行けることの意味を改めて考えさせられました。