江戸期をつうじて書状や小荷物などの輸送を支えた飛脚。
明治政府による通信・輸送体系の刷新による対立を経て
列島全土にわたる陸運のネットワークを構築し今日の物流事業の定礎を創りあげていった推進者の生涯
現在社会で必要不可欠な物流産業。その起源は江戸時代に活躍した「飛脚」に発している。江戸から明治に、そして現在、その変遷には未だ明らかにされていない熾烈なドラマがあった。
飛脚問屋に奉公した佐々木荘助という人物が飛脚の改革に乗り出すが、明治新政府は「郵便」や「物送」の官営を図り、今までの飛脚業と真っ向から対決していく。船便の発展、鉄道の開通、電信の発達と、この大変動期に飛脚を取りまとめてきた人物はどう対抗していき、どのように解決されいったのか。本書は、その経緯を初めて明らかにする。克明に調べ上げた現代に生かすべき秘められた話といえる。【内容】
Ⅰ 佐々木荘助の誕生 その生い立ち/下妻の歴史と風土/荘助の巣立ち
Ⅱ 飛脚問屋の幕末維新 飛脚という事業/幕末動乱と宿駅制度/駅逓改革から郵便創業へ
Ⅲ 陸運独占への道のり 駅逓司の攻勢/官民棲み分け体制/駆け引きの舞台裏
Ⅳ 佐々木荘助の事業戦略 陸運の政商へ/真誠講の創設/川蒸気・通運丸の運航
Ⅴ 陸運の政商が遺したもの 保護喪失と鉄道/競争激化と社内対立/近代企業の創成

 

<著者紹介>

松田裕之(まつだ ひろゆき)

昭和33(1958)年、大阪府生まれ。神戸学院大学経営学部教授。ヒストリーライター。博士[商学]関西大学。本務校で経営管理総論・労務管理論を講じながら、情報通信史や実業史に関する著書を執筆。
主な著書―『ATT労務管理史論─「近代化」の事例研究─』『明治電信電話(テレコム)ものがたり─情報通信社会の《原風景》─』『モールス電信士のアメリカ史─IT時代を拓いた技術者たち─』『高島嘉右衛門─横浜政商の実業史─』『港都神戸を造った男─《怪商》関戸由義の生涯─』