「ろばのロバートはわるい子です」
こうたろうさんの農場をおいだされたロバートは、どうして、こうたろうさんが怒っているのか、さっぱりわかりませんでした。行くところもなく、なきながら遠くへ行くロバート……。その先にまっていたできごとは?
そして、ロバートは本当にわるい子なのでしょうか??子どもたちが自分でよめるように、すべての漢字に振り仮名つきです。小学校低学年から読めます。プレゼントブックにもぜひ。

<編集担当より>
作者の林原玉枝先生が、この本の生まれた背景を寄せてくださいましたので、ご紹介いたします。

やんちゃな、ろばのロバートは、その名も美しい「さくらの山農場」に、実際に、存在していたのですね! ロバートへのいとおしさ、熱い思いがみのり、出来上がった物語です! 私の友人に、本格的有機農業を営んでいる、坂本さんという方がおられる。その二代目が、ろばのロバートの飼い主の、耕太郎さんである。私の仲間内では、別名「この世の天国」とも呼ばれている「さくらの山農場」で、養豚を主とした循環型有機農業を営んでいて、毎日の暮らしぶりを「ぶた飼いと、天ぷらカーと、子育て」とサブタイトルをつけた「さくらの山農場日記」というブログに綴っておられるのだが、これがすこぶる面白いのだ。
大自然の中で営む、自給自足に近いダイナミックな暮らしぶりが、面白くないわけはなく、私は、ひそかな憧れと多大な尊敬を抱きつつ、彼の文章を愛読している。 ある日、ブログを開いてみると、彼が酷く憤慨している。ろばのロバートが、ライ麦を食べたというのだ。大切な種麦のライ麦を。
そもそも、ロバートは、農場の梅畑に生える雑草を食べてもらう、というお役目でやってきたのだが、ロバートの胃袋は、梅畑の雑草だけで満足するほど小さくなかったらしい。収穫前の梅の実や、豚のえさまで食べてしまったロバートは、その他、語りつくせぬほどの、ありとあらゆるやんちゃな狼藉を働いたあげく、ライ麦事件を起こしてしまったわけで、普段は優しいと、自分で公言する耕太郎さんも、ついにキレました、というわけだった。
彼のブログには、「ろばを飼ってみたい方、または食ってみたい方、ご一報ください」とまである。耕太郎さんの情けない気持ちもよくわかるけれど、私は、このご迷惑な、ろばのロバートが、愛しくてたまらない気持ちで、胸がいっぱいになった。昔、子どもの頃、私もロバートみたいだったのを思い出したからだ。失敗ばかりして、母によくおこられたっけ。
……ロバート、あんたのこと、私は好きよ。大きすぎて抱きしめてあげられないけど、そのかわり、お話を書いてあげる。……
私は、それでロバートのお話を書いたのだ。出来上がったお話を、誰より耕太郎さんとその家族が、大喜びしてくれた。
ところで、実はロバートは、今はもう、さくらの山農場にはいない。県北の農場に、もらわれていったのだが、その農場には、小学生の男の子がいて、クリスマスの夜、眠る前に「ライ麦をたべたろばのロバート」のお話を、母親に読み聞かせてもらった彼が、翌朝、目を覚ましてみると、なんと、サンタさんがロバートを連れてきてくれていた、という。すごい演出で、ロバートと彼は出会ったのだった。しあわせなロバート。新しい農場で、また、たくさんの物語が始まっているに違いない。

<著者・画家紹介>
林原 玉枝(はやしばら たまえ)
広島県尾道市生まれ。児童文化の会会員。日本児童文学協会会員。
1991年に『おばあさんのすーぷ』(女子パウロ会)で、第一回けんぶち絵本の里大賞を受賞。おもな作品に『なおちゃんのハンカチ』『わたしぶね』(福音館)『ロクさんのふしぎなるすばん』(けやき書房)、『森のお店やさん』『ふしぎやさん』(アリス館)『森のおくの小さな物語』など。
さとう あや
千葉県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、長沢節セツ・モードセミナーに学ぶ。第六回日仏会館ポスター原画コンクール佳作受賞。主な挿絵の作品に『ネコのタクシー』シリーズ『バレエをおどりたかった馬』『ケイゾウさんは四月がきらいです』『おばけのおーちゃん』『ゆかいな牧場』(以上福音館書店)『ピピンとトムトム怪盗ダンダンの秘密』『ドレミファ荘のジジルさん』(以上理論社)『ともだち』(偕成社)。絵本の作品に『セロ弾きのゴーシュ』(三起商行)『ふみきりのかんたくん』(教育画劇)などがある。