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第44
2010年9月17日(金) 18:30~20:30


気象・気候変動予測の最前線


ゲスト:高橋 桂子 氏
((独)海洋研究開発機構地球シミュレータセンター/アプリケーションラボプログラムディレクター)

 

今年の夏は格別に暑かった。ちょっとそこまで外出することすら、うんざりするくらいであった。そんなときに「気象・気候変動予測の最前線」というテーマで、高橋桂子氏(海洋研究開発機構 地球シミュレータセンター アプリケーションラボ プログラムディレクター)にお話していただいたのは本当にタイムリーだった。

 

地球シミュレータという呼ばれるスーパーコンピュータをご存じだろうか。最初に皆をうならせたのが、このスパコンを使って、ある日の皇居周辺の気候環境をシミュレートした映像だ。一定の範囲内の風向、気温、河川、生態系(植物のみ)などのデータや、都市の形状とそこで排出される熱、水蒸気の動態や緑(樹木の種類)までも計算式に当てはめ、結果を3次元で表現したものだ。

 

非常に限られた特定地域の情報もシミュレーションすることができ、扱うデータはその地域の環境要因、たとえば永久凍土、湾岸域、海の表層流なども含み、たいへんな細かさ、幅広さだ。しかもこうした情報だけでは足りないという。海で起きる熱交換によって発生した水蒸気が、上空で雲となり、雨となって山や地表に降りそそぎ、川へ流れ込み、海へ還ってくる水の循環は、地球の息吹といわれ、気候に多大な影響を与える。それらを考慮に入れなければ、気候の予測は困難なのである。
そういったデータを基に、温暖化について考えてみると、地球全体の平均気温は、100年で0.7℃~0.9℃上昇している。上昇に伴って北極の氷がどんどん溶けて、海へと流れ込む。ひとたび海水温が上昇すれば、現状ではまた氷に戻ることはゼロに近い。

こういったことから、30年~50年先の地球では、おそらく北極はがらりと様変わりするだろうことが予測されている。長い期間でみると、0.7℃程度の上昇がどれほどの影響を与えるかはわかりづらい。これを数十年単位で考えると、その変動は激しいのではないかと考えられている。

 

では、どういった仕組みで気温が上昇するのか。CO2の増加が原因ともされるが、海洋の変動も関わってくる。その現象がエルニーニョ、ラニーニャ、インド洋ダイポールと呼ばれる現象だ。これらはかなりの影響力を持っていて、その気候変動が重なって、その地域の気候がどのようなものかが決まるのだそうだ。特にインド洋ダイポールが起こった年は、台風が相次いで発生したり、旱魃が起きたり、米が不作になったりと、通常とは違うことが起こる。インド洋でダイポールが起こった年は、こういったことに注意する必要が出てくる。

 

しかし、それぞれの発生位置にずれが生じ始めている。位置が変わると、雲の発生位置が変わる。それは一体どういうことか。簡単にいえば、今までスコールが降っていた地域では降らなくなり、スコールなど降らなかったところで、降るようになるということだ。これはなかなか大きな気候変動である。海はあたたまると、なかなか冷めないため、エルニーニョが起こった後、なかなか水温は下がらない。変動は続くのである。そういった現象の個々の機能はわかってきたが、メカニズムがわからない。より詳しく予測できなければ、不測の事態に対応できない。

そこで登場するのが、スーパーコンピュータ、いわゆるスパコンだ。ものすごい速さで複雑な数式を計算するコンピュータである。高橋氏が活躍する気候変動予測研究では、すぐに生活に直結するような数ヶ月、数年先のダイポールモード現象やエルニーニョ現象などの予測を、農業・漁業・産業、社会の安全安心、人々の健康、水資源管理などに役立てようとしている。計算式をプログラムし、後は数値を入れればシミュレーションが完成する。例えばエルニーニョという要因のときに、一地域または地球全体の気候は一体どうなるのか、予測されるわけだ。

だが、海の状況は常に動いており、地上も絶えず変化する。気候の変化・変動は常に起こっているのだ。地球に網目をかけたように分割してデータ解析を行うが、以前は100km単位で区切っていたが、最近は10km単位で区切ることも可能となってきめ細かな測定が可能になった。垂直方向に何層にも分けることができる。こちらも日々進歩しているのである。

 

そこで登場するのが、スーパーコンピュータ、いわゆるスパコンだ。ものすごい速さで複雑な数式を計算するコンピュータである。高橋氏が活躍する気候変動予測研究では、すぐに生活に直結するような数ヶ月、数年先のダイポールモード現象やエルニーニョ現象などの予測を、農業・漁業・産業、社会の安全安心、人々の健康、水資源管理などに役立てようとしている。計算式をプログラムし、後は数値を入れればシミュレーションが完成する。例えばエルニーニョという要因のときに、一地域または地球全体の気候は一体どうなるのか、予測されるわけだ。

だが、海の状況は常に動いており、地上も絶えず変化する。気候の変化・変動は常に起こっているのだ。地球に網目をかけたように分割してデータ解析を行うが、以前は100km単位で区切っていたが、最近は10km単位で区切ることも可能となってきめ細かな測定が可能になった。垂直方向に何層にも分けることができる。こちらも日々進歩しているのである。

それでも今のままでは、自然の速度に追いつかず、災害による被害が後をたたない。近年の気候変動は目覚しい。特に東京は、世界で一番温暖化が早い都市なのだそうだ。今現在の気候が、様々な要因によって変動、変化していくと、いったい日本に、地球にどんな異変が起こるのか。それは何年後、いや何か月後なのか。できる限り詳細に予測し、あらゆる事態に備えられるよう、地球全体で考えなければならない。

地球シミュレータは、大気・海洋分野、地球内部探査分野、バイオなどの先進分野、計算科学など、様々な研究部門で使われている。また公募によるマーケティングなどの社会経済活動や海外との共同研究利用にも大きく配分されて、世界の人々だれにでも開かれて成果を上げている。「多くの人の努力やたくさんのデータによって、様々な予想ができるようになってきた。『一番でなければだめなのか』という話があったが、予測をより確かな情報にするためには、世界一のスパコンの技術が必要なのです。」と、熱く熱く高橋氏は語った。


 

海の上をのんびりと流れていく雲をイメージ。雲を持ち上げてみると、その下にはカエルが。小さな世界を表現した、天気のゼリー。ご好評をいただきました。

今回のデザート


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