高木 きよ子 著
「皇室典範に関する有識者会議」は11月末に最終報告を出す予定であるが、いよいよ女性天皇誕生が現実味を帯びてきた。
しかしこの国には、かつて八人もの女性天皇が実在していたことは意外と知られていない。 宗教学者、高木きよ子氏が『日本書紀』『続日本紀』を基にして、八人の女性天皇の業績と人間像に迫る。女性ならではの温かい視点と鋭い考察で、謎に包まれた女帝たちの生涯と実像を明らかにする、画期的な女性天皇物語。宗教学者・山折哲雄氏の推薦文掲載。
女帝の運命を通じて歴史を語る

世間では女性天皇を待望する声も聞こえる昨今、本書は実際にわが国に存在した女帝を取り上げ、その生き方と運命について『日本書紀』『続日本記』を通じて明らかにしていく。

いうまでもなく現今の皇室典範では男子の皇族のみが皇位を継承するが、歴史をひもとけば八人の女帝が十代にわたり天皇として活躍した。現天皇が第百二十五代であり、神話上の天皇を別とすれば約一割が女帝だったことになる。

女帝が誕生した歴史的背景、即位とその生涯、治世について文学博士(東京大学)であり、宗教学者、哲学学者でもある著者が歴史的見地からだけでなく、『万葉集』という歌の世界を絡めた、新しい視点で考察することで何が見えてくるのか?

八人の女帝に共通するのは、天皇崩御後に即位したか、あるいは息子の成長を待つ間の中継ぎ的な役割を果たした点であり、皇統を維持する上で必要不可欠な知恵であったということ。しかもほとんどは飛鳥、奈良時代に限られ、男子の幼帝も多かったことを考えあわせると、女帝がいかに世の混乱を収拾するために、その役割を見事に果たしたかがよくわかる。

またそれと同時に本書は皇統が我が国の歌の文化と深くかかわりあい、その伝統を今に伝えてきたことを改めて教えてくれている。

朝日新聞 BOOK TIMES 11月号「今、注目の本。」より
<著者紹介>
高木きよ子(たかぎ きよこ)
1918年東京生まれ。1939年東京女高師附属高女専攻科国語部卒。
戦後、東京大学文学部研究生、お茶の水女子大哲学科をへて、1954〜60年東京大学大学院人文科学研究科宗教学科修士課程、博士課程に在籍。その間、米国ハーバード大学に留学。
1961〜81年アメリカ・カナダ大学連合日本研究センターに勤務、退職時教授、副所長。その間1968〜69年米国コロンビア大学東洋学部講師。
1981〜84年お茶の水女子大教授。
1985〜89年東洋大学教授。
1991年文学博士(東京大学)著書『ウィリアム・ジェイムズの宗教思想』1971年/大明堂 『文学に見られる生と死』1983年/大明堂 『西行の宗教的世界』1989年/大明堂 『桜 その聖と俗』1996年/中央公論社 『西行―捨て果ててきと思ふ我身に』2001年/大明堂

 

八人の女帝
定価:1,760円(本体1,600円+税)

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2005年10月11日
ISBN978-4-902385-19-9 C0021