サロン ド 冨山房 - Folio

08年10月17日(金)第24回サイエンスカフェを開催いたしました。

第24回 10月17日(金) 18:30〜20:30
「産業・農業・医療分野における放射線の利用と課題」
柴田 徳思氏
(日本原子力研究機構・特別研究員、東京大学名誉教授)

今回のゲストは2回目の登場の柴田徳思氏だ。2007年7月20日の第11回サイエンスカフェ「新しいがん治療法の開発—中性子捕捉療法の進展—」では、中性子を使った医療についてお話をしてくださった(以前の内容は過去の模様からごらんください)。第24回では「産業・農業・医療分野における放射線の利用と課題」という、医療だけではなく、様々な分野での放射線利用についてお話してくださった。
放射線を使った技術はどんどん進歩し、今ではいろいろな場面で有効活用されている。もっと便利になるよう、開発は進められており、おそらく5年後、2013年頃にはより利用されやすくなり、そのための技術も安心できる状態になっているはずである。しかし、現在の不景気や株価の暴落などのニュースを見ていると、経済面での不安がよぎる。放射線技術開発には膨大なお金がかかるのだ。
放射線に対するイメージは「危険」と答える方が多いのではないだろうか。実は放射線は、私たちの生活の中の本当に身近な様々な場面で活躍しているのだ。そのひとつが「害虫駆除」だ。例として、ここ数年でスーパーなどによく出回るようになった「ゴーヤー」を挙げる。実はこのゴーヤーに、ウリミバエというハエの一種が卵を産みつけていることがある。ウリミバエとは台湾から渡ってきた外来種。八重山諸島から拡がったとされ、奄美諸島でも確認、ついには琉球列島全域でみられるようになった。ウリミバエを本土へ持ち込まないようにするため、ゴーヤーは本土に出荷できなかった。そこで登場するのが放射線による「不妊化」だ。まず人工的にウリミバエを繁殖させ、サナギのときに一定量のガンマ線を浴びせると、繁殖能力のない個体となる。孵化後、野外へ放ち、この個体が交尾相手に選ばれた場合、繁殖能力がないため、交尾しても卵は生まれない。この作業を地道に長年繰り返すことによって、沖縄各島でウリミバエの根絶に成功した。つまり放射線のおかげで、私たちの食卓にゴーヤーチャンプルーが並ぶというわけだ。
食料の自給率を上げようという試みに、一役かっているのも放射線だ。





クリックで拡大写真がご覧になれます
現在、日本の農作物の種のうち相当量が食害や腐敗で廃棄されてしまっている。少量の放射線を照射するとによってこれを改善することができる。放射線の利点は、均一に処理ができ、処理中に温度が上昇するが影響は少なく、適度に使用すれば汚染・残留もない。食品加工の際に殺菌や滅菌の効果があり、さらにパッケージ上からも効果があることだ。加工後も利用できる。じゃがいもなどの発芽による長期保存が困難な食品にも、少量照射することで発芽抑制ができ、長期保存が可能となる。もちろん放射線を照射した食品にはラベルが貼られ、日本に比べて衛生環境のよくないアメリカでは、ラベル付きは高級品とされているそうだ。また、放射線を照射した食品は、検査によってきちんと検知できるということだ。しかし、放射線照射による毒性や微生物学からみた安全性、栄養学的には問題がないのか、などの点が懸念され、現在それに対応するためのプロジェクトがスタートしたそうだ。
前回のカフェでお話してくださった医療分野でも、放射線はより活躍するようになってきたという。放射性物質を使うことによって、癌、特に骨癌の発見がさらにしやすくなった。様々な線種の検査機器を組み合わせて、より微細な部分の変化を感知したり、アルツハイマーの検知にも活躍している。
今後の課題としては、機器を駆使して正確な診断を導くための技師、医師などの人材の育成、放射線照射精度の向上、現在ではカナダなどからの輸入に頼っているラジオ・アイソトープの国内生産量の向上、それに伴う原子炉建設や装置の小型化、煩瑣な薬事承認など、簡単には解決できない問題が山積みだ。最も問題なのは、放射線に対する「恐怖」。「原子炉から放射性物質が漏れたというニュースばかりが流れ、いかに有効活用されているかについては、ほとんど報道されない。」「米国ロングアイランド島の原子力燃料漏れのとき、環境省の基準以下ということですこぶる平静な対応であった。日本人が『絶対安全』神話にとらわれず、どのくらい以下なら安全なのかという、リスクの考え方を取るようになれば、科学的な話し合いが可能になる。」おだやかに、しかし熱意をこめて原子力について語る柴田氏は、有害だと迫害され続けるヒーローが、いつか大きな拍手を受けられる日が来ることを、切に願っているようだった。


今回のデザートは「電離放射線マーク」からイメージして作ってくれました。黒い部分はなんと、ごまペースト! これが意外と合っていて、とてもおいしくいただきました。

▲ページの先頭に戻る
株式会社 冨山房インターナショナル  〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-3 冨山房ビル7F
TEL : 03-3291-2577 , 2578 / FAX : 03-3219-4866 / E-mail : info@fuzambo-intl.com
このホームページに掲載しているデータ、記事、画像、等の無断複写・転載を禁じます。

Copyright © 2017 書籍 絵本- 冨山房インターナショナル