サロン ド 冨山房 - Folio

08年9月19日(金)第23回サイエンスカフェを開催いたしました。

第23回 9月19日(金) 18:30〜20:30
「進化人類学からみたヒトの一生」
長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学・教授)

前月8月をお休みして、久しぶりのサイエンスカフェは、多くの方々の参加があり、期待と熱気に満ちていた。演者は長谷川眞理子氏。ご著書も多く、幅広い分野でご活躍なさっている。今回は「進化人類学からみたヒトの一生」というお話だ。
 長谷川氏が今興味を持っているのは、言葉の起源。地球上でこれほどまでに環境を変えるのは、ヒトだけだ。ではなぜその力があるのか。それはお互いが協力できるからではないか。それならば、なぜ協力できるのか。それらの根源はどこにあるのか。すべてにおける根源がとても興味深い、というお話から始まった。
 「ヒト」という生物は、いったい何なのか。かつてサルの祖先は地上で生活をしていた。食物を求めて樹上へと移り、そこで霊長類が誕生する。彼らは樹上生活をし、ベジタリアンで、三次元構造を把握し、目が良く、多くの動物ではみられない特徴として色覚がある。同じ特徴を持ったまま、再び地上へ降り立ったのが類人猿だ。
 類人猿にはヒト、チンパンジー、ボノボ、オランウータンなどが存在する。しかし直立二足歩行をしているのは、ヒトだけだ。それはなぜか。おそらく食物競争に負けて追い出されたか、食物が足りなくなった際、ジャングルにしがみついた種と、サバンナへ新境地を求めた種による違いではないかと考えられる。
理由は解明されていないが、森の中で突如立ち上がったヒトの祖先は、そのままサバンナへと歩いていった。完璧な直立二足歩行によって多くの変化が起こる。暑いサバンナでは体毛が邪魔だったが、立つことによって熱調節ができ、汗腺も発達、体毛も減った。手が自由になり、様々なことに使えるようになった。立つことで喉頭が下がり、多くの音声が出せるようになった。
サバンナには生きていくために必要な食物が足りなかった。植物は少なく、土も固くて掘れない。食物を得るためにヒトは1日中歩いた。立ち上がって自由になった手で道具を使って、動物を捕まえるようになる。脳は運動を統合し視覚等の感覚制御をするべく益々発達する。1人では困難な狩も、発達した音声で、仲間とコミュニケーションを取りながら行えば成功する。こうして社会性も発達していく。脳や体に多くの変化が起こったが、以上のような脳の発達過程は、直立二足歩行に端を発している。体重と脳の大きさは比例していくものだが、ヒトの場合はその比例直線よりも上の数値を示す。脳の発達によって、自意識が生まれ、三項関係や因果関係が理解でき、社会生活や共同作業を行い、文化が創られていった。ヒトの誕生である。
脳が大きくなったからといって、いいことばかりではない。大きな脳にはコストがかかる。さらに、大きくなった脳でヒトが創りあげた文化や社会構造は、膨大なものとなり、それを伝えるために他の類人猿と比べ、異常ともいえるほど長い期間、親子で行動を共にすることになった。それに伴いメス、つまり女性は大きく変わった。発情期や繁殖期の喪失だ。育児期間が長く、1人では育児が困難なため、共同で生活する。繁殖期を作って遺伝子をもたらす父親を確保すればいいというものではなくなる。脳の発達に伴う自意識の芽生えから、繁殖の相手を選ぶことが非常にパーソナルなことになったことに起因しているのでは、と長谷川氏は語る。また他の生物にない特徴として、育児を手伝う経験者、つまり祖母がいることも、安心感やより確実な育児を可能にしたのだろうと考えられる。
ヒトになるまでに膨大な時間があった。そのすべてに原因があったはずだ。なぜこのように進化したのか。解明することは難しい。しかしその原因を考え、仮説を立て、それを基に研究をしていく。その仮説が正しかったときや思いついたときのうれしさ、先に誰かに証明されていたときの悔しさ、証明することの難しさを、その体いっぱいで表現する長谷川氏は、誰よりもヒトに興味があり、ヒトを大切に想っているのだろうということが伝わってきた。











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