サロン ド 冨山房 - Folio

08年4月18日(金)第19回サイエンスカフェを開催いたしました。

第19回 4月18日(金) 「南極から地球と人類の未来を考える」
柴田 鉄治氏 18:30〜20:30まで

今回の演者は南極に行ったことがあるという素晴らしい体験をお持ちの方である。朝日新聞社に長くお勤めだった柴田鉄治氏だ。記者時代、1965年の第7次越冬隊に初めて参加して、昭和基地の生活を経験し、68年にも現地取材をなさっている。2005年には、「現役時代に最も印象深かった南極の地を科学ジャーナリストとして踏むことができた」とのことで、約40年ぶりに訪れた南極で考えたことやその貴重な体験をお話してくださった。
南極は意外にも、まだ歴史の浅い大陸である。キャプテン・クックの「氷の中に大陸があるのでは」という仮説を基に、アムンゼン、スコットらが探検隊を率いて南極点到達を争い、1911年にアムンゼンの勝利に終わった。当時、日本の白瀬隊も南極点を目指していたが、あまりの厳しさに途中で断念した。それは人命を大事にする英断であったが、当時の日本は戦時中ということもあり、世論は芳しくなかった。それにも関わらず、戦後まもなく行なわれた南極調査(朝日新聞が後援)に国民がこぞって応援したのは、暗い世の中に一筋の希望をという日本人の願いだったのだろう。そんな中で生まれたのが、かの有名なタロー、ジローの物語であった。
氷の海を行く砕氷船は、氷を割っているように見えるが、実は氷を踏み潰して進む船なのである。そのため船底は丸く、海が時化(しけ)ると揺れがひどいそうだ。南極へ行くには荒れる海を乗り越えなければならない。船に弱い人にとっては、なんと過酷なことであろうか。しかし、その海を越えると氷海は鏡のような凪。すばらしい光景に遭遇する。目の前に現れる氷山の写真を見せてくださった。本当に温暖化が進んでいるのだろうか、という気になる。なくなってはいないが、流出する速度は早まっているのだろう、と柴田氏は言う。大陸の上に約2000mもの雪が積もっていて、徐々に溶けている。その速度が上がっているのだ。温暖化は現実のものであった。
産業革命以後、石油や石炭によって大気中の二酸化炭素濃度が上昇した。数値にしてどれほど上昇したのか。それを比較することができるのが、南極の下層にある氷だ。下層の氷は産業革命が起きるよりも、もっと以前にできたものだ。つまり汚染される前の大気を含んでいる。どれだけ人間が汚したのか。そういう調査や研究を、南極基地で行っている。
40年前南極を訪れた時には、ペンギンが500羽ほど船に近づいてきたが、今回は少なくなっていた。もしや数が減ったのでは、と心配し、基地の近くの巣へ行ってみると、ちっとも減っていなかった。「これは人間への興味が薄れたのではあるまいか。また来たなと思っているのかもしれない。」とユーモアたっぷりに南極での出来事を、多くの写真とともに話してくださった。
南極大陸は、どこの国の領土でもない。というのは、1961年にアメリカ・ソ連を中心に南極条約を締結したことによる。互いに軍事利用せず、科学観測は自由にし、国際的に協力しよう、というものだ。しかし当時、南極は自分たちの国の領土だと主張する国が7つあった。敗戦したこともあり、日本は真っ先に領土権を放棄したが、その他の国は一歩も譲らなかった。そこで領土権主張はそのままで、新しく名乗り出ることは許さないとして、領土権の凍結を図ったのだ。こうして南極は、世界共有財産となった。
南極には様々な国の、様々な基地がある。しかし、国境はない。その昔、日本の調査船が氷に挟まれ、身動きが取れなかった時、それを助けてくれたのはソ連だった。言葉も通じず、冷戦中であったのにも関わらず、ソ連は日本の船を助けたのだ。当時の乗組員が感謝をこめて寄せ書きしたものが、ロシアの船に残っていた。ロシアの調査船に偶然乗り込んだ柴田氏はそれに出会い、驚き、感動したという。「宇宙から見たら、世界地図にあるような国境線なんて、どこにもないと言うが、南極もそう。様々な国が入り混じって存在し、互いに協力している。国ではなく、人が存在するのみである。世界中が南極になれば、世界平和が実現されるのだ。世界平和のお手本は、ここにあるのではないだろうか。」大きな視野を持った柴田氏は、70歳を越えてもまだまだ現役で、若い人に負けない情熱を持って、力強く語ってくださった。











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