サロン ド 冨山房 - Folio

07年12月21日(金)第15回サイエンスカフェを開催いたしました。

第15回 12月21日(金)18:30〜20:30
「遺伝カウンセラーが育ちます」


昨今耳にすることが多くなってきた遺伝的な病気は、ゲノム医学の発展につれて原因究明のための研究が進みつつあるが、その多くはまだ治療が難しい。遺伝する病気を持って生まれた場合、または発症したとき、患者がそれにどう向き合っていくか。正しい遺伝病の知識や公的援助などについて心理的配慮を持って説明し、患者が自分自身の対処を選択できるよう支える、その立役者が「遺伝カウンセラー」である。
現代の医療においては、遺伝子診断や出生前診断といった「遺伝子の検査」が選択される場面は少なくないという。しかし、その検査を正確に解説できる「臨床遺伝専門医」の数は足りていない。さらに障害を持つ患者の家庭は、疾患のケアのほかに、社会的・経済的・人間関係などさまざまな問題に直面する。それらの相談相手となる人材も少なく、どこに相談したらよいかということもあまり知られていない。
このような現実を受け止め、お茶の水女子大学では、大学院に遺伝カウンセラー養成課程を設立した。その授業内容は他の大学院課程と比べて、1.5〜2倍とかなり多い。「このコースの学生たちは日本一勉強するんですよ。」今回の演者である滝澤公子氏が、誇らしげに語った。「本学には医学部はありません。しかし東京女子医科大学と提携を組み、また多くの専門病院の協力を得て、医療の現場もしっかりと経験しています。そのおかげで広範な症例を学ぶことが可能になっています。」
遺伝カウンセラーは遺伝病についてプロフェッショナルと言っていいのだろう。お茶の水女子大学の室伏きみ子教授が、10年間も構想を練って同大学大学院にこのコースを設置したところ、すぐに文部科学省から科学技術振興調整費の支援を受けたことは、遺伝カウンセラーの養成が時宜を得たものだという証明であると考えられる。しかし実情は、遺伝カウンセラーが医療従事者ではないために、医療現場での雇用が難しい。そのため実力を発揮する場がまだほとんどないのだという。アメリカでは、中学生の遺伝の教科書に、免疫不全で生まれてきた子どもや男性染色体の働きが不全のため、遺伝子上では男なのに女として生まれてきた、などという実例が、写真付きで記載されている。自分の子どもが遺伝病を持って生まれてくることがわかった場合、中絶するかしないか、自分だったらどうするか、といったことが話し合われているそうだ。海外と日本とでは、ここまでの温度差がある。いや、危機感の差と言っていいかもしれない。
遺伝カウンセラーはこれからの未来において、とても重要な「医療従事者」である。これまで人知れず苦しんできた人々がどれほどいるのだろうか。これからはそんなことがないように、同じいのちを授かった子どもと親が希望を持って生きていけるように、その道を共に探る遺伝カウンセラーが必要不可欠なのだ。その社会的認知は、アメリカでなされてからどのくらい経って、日本で高まっていくのだろうか。
今年お茶の水女子大学からは4人の遺伝カウンセラーが羽ばたいていった。まだ見ぬ患者のために、自分たちもまだまだ勉強していかなければならない、とそれぞれがしっかりとした決意を語った。
遺伝病の患者だけでなく、若い遺伝カウンセラーたちが報われ、認められていく未来を願いたい。その日の拍手には、暖かいものがあった。

クリックで拡大写真がご覧になれます











▲ページの先頭に戻る
株式会社 冨山房インターナショナル  〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-3 冨山房ビル7F
TEL : 03-3291-2577 , 2578 / FAX : 03-3219-4866 / E-mail : info@fuzambo-intl.com
このホームページに掲載しているデータ、記事、画像、等の無断複写・転載を禁じます。

Copyright © 2017 書籍 絵本- 冨山房インターナショナル